研究関連トピックス
2025年7月11日
マグネシアクリンカーの品位がマグネシア-スピネルれんがの特性に与える影響
1.背景、研究内容
マグネシアクリンカーは石灰と海水を原料に純度、成分を調整して製造されている。純度99%クラスのマグネシアクリンカーはセメントキルン用のマグネシアスピネルれんがの原料に使用されている。近年、SDGsの観点からセメント製造時の廃棄物使用量が増加しており、持ち込まれるアルカリ硫酸塩によるれんがの浸食が問題となっている。そこで、マグネシアクリンカーの成分と、これを原料に用いたマグネシアスピネルれんがの特性について検討した。

2.マグネシアクリンカーの特徴
- 高い融点(2,830℃)を持ち、耐火度が優れている
- 塩基性でアルカリ(セメント、石灰)に対して高い耐性を示す

3.マグネシアクリンカーの主な用途
- 塩基性耐火物原料(マグネシア系れんが・スピネルれんが原料等)
- 不定形耐火物原料(スタンプ材・吹付材等)
- 電融マグネシアや合成スピネル原料など
4.実験内容と検討結果について
実験で使用した原料(マグネシアクリンカーの品位)

実験フロー①(マグネシア・スピネルれんが試験片の作製方法)

実験フロー②(硫酸カリウムによるれんがの浸食試験方法)

結果と考察
- 浸食試験の結果、硫酸カリウムによる浸食の大きさはA<C<Bの順に大きくなった。
- 粒界の浸食は化学組成(CaO/SiO2比)が変化しており、CaO含有率が高いと硫酸カリウムに浸食されていた。
- 仮にCaO含有率が高くても、SiO2の含有率も高い(CaO/SiO2比が低くなる)条件とすれば,MgCaSiO4のような硫酸カリウムと反応しにくい化合物が多く形成されることにより,浸食を抑制できた。
マグネシアA

MgO純度が高く、CaO/SiO2比が適度の場合組織の脆化が小さい。
マグネシアB

MgO純度が高く、CaO/SiO2比が高いと組織の脆化が見られる。
マグネシアC

CaO/SiO2比が低いと組織の脆化が小さい。
5.まとめ
- 硫酸カリウムの浸食はマグネシアクリンカーのCaO含有率が高いと進行しやすいが、CaO/SiO2比が低いと進行しにくい。
- マグネシアクリンカーの化学組成を制御することで、マグネシア-スピネルれんがの特性が制御できる。
6.参照
- 第40回セメント用耐火物研究会
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